Looking for a Sense of Authenticity

<芸術は長く、人生は短い(Ars Longa, vita brevis)>

【書籍ログ】ワーケーションの教科書(長田英和)

このエントリーを書いてから、noteにもう少しサマリー的なものを書いた。 はてな←→noteの試み。書くのにカロリー食うんだけど!

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Markdownのインテンドがうまく入ってないから、タブの入れ方を検証する。タブおすと別の項目にいっちゃう。 →結局あたまに半角4マス、ハイフン以後に半角あけ、という書き方を徹底しないとMarkdownにならないということだった。 はてな記法のほうが楽でよかったが、まあこの際Markdownをやってみよう。 →エディタ内編集だとやりづらい点もあったので、BearでMarkdown記述してペーストする、を次回は試す。


研究がいまひとつ集中できないので、はてブロ(荒い)→note(精製)のイメージで研究関連の読書ログから初めてみようと思う。 再読になるが、この本からやる。

前提

五月雨メモ

メインの第4章から。

第4章 ワーケーションが地方を再ブランディングする。

過疎化や空き家に悩む地方自治体の現状と、その解決策としての関係人口創出、そしてワーケーションがその鍵となるという論調。事例を含めての章となっている。

  • 日本の人口は総じて減少中。そのなかで、交流人口や関係人口の創出は喫緊の課題。
  • 新型コロナ禍によって、都市部から地方への移住志向が高まり、ワーケーションの取組が増えてきていることはチャンス。
  • 東京圏は国土面積において3.6%ながら、全人口の3割3600万人が居住。総生産は3分の1以上を占める。
    • 2008年に人口はピーク。1741自治体の中で人口減少自治体は1411(80%超)ある。
    • 日本創成会議による「消滅可能性都市」も49.6%にあたる896市区町村。消滅可能性都市とは、2010〜2040年の30年間の「再生産力」として20〜39歳の女性50%以下になる都市。(※)
    • 空き家の増加も顕著。2018年の総務省統計局の「住宅・土地統計調査」では最も高い山梨と和歌山県で20%超え、沖縄と埼玉は少ないがそれでも10.2%
  • ワーケーションが関係人口創出のカギ。直接的な方法としては移住人口を増やすことだが、限られた人口のパイを取り合うことになる。
  • 次善の策としての交流人口(観光)や関係人口を増やすことに至る。
    • 交流人口については、出張需要は大幅に減少することが予想される。
    • DBJの2017年の調査では、2016年の国内旅行観光の全体で21兆円、うち出張目的は3.7庁円で18%となる。これはコロナ禍以降で加速している。
  • 京都市圏への一極集中からの変化の予兆。
    • 総務省住民基本台帳人口移動報告」では、2020年5月東京都ではじめて転出超過に。以後、連続している。
    • 実際は都市圏内の郊外移動がさかん。埼玉県が転入超過の第1位になっている。
  • 居住エリアが郊外に広がると、観光需要は大きく変化する。自動車保有率上昇、遠距離移動の忌避から近隣へのマイクロツーリズムが増加すると見込まれる。
    • 星野リゾートの星野佳路社長の提唱。遠方の一見客でなく、その地域に近い場所に居住する人をリピーターとする方針。
    • 日本に限らないトレンドに。Airbnbのアンケートでは、アメリカの半数以上の調査対象者が日帰りドライブ旅行を希望している。
    • 都市近郊の観光地やリゾート地では、非日常体験の提案から近隣リピーター獲得のため、現地の日常生活の体験価値訴求の戦略へと方針転換する必要があるだろう。
    • 観光目的の訪問はせいぜい年に1〜2回、自宅近隣では宿泊せずに日帰り旅行のケースもあるだろう。しかし、その地域に体験価値があり、自分の生活の一部になれば訪問頻度や滞在時間も上がる。
    • その体験価値を上げる際に最も手軽で効果的な手法がワーケーションを行うためのインフラ整備と訴求である。(※)
    • ワーケーションに訪れる人は、仕事と休暇の両方をその地域で行うから必然的に地域に滞在する期間が長くなる傾向にある。自宅からの日帰り距離でも、ワーケーションならそのまま宿泊する可能性が高くなる。
    • ワーケーションではこれまで国内旅行で取り込みが難しかった平日の旅行客を呼び込むことも可能になってくる。
    • 参考:日帰りの1人1回の消費額は1万5600円程度、宿泊が伴うと4万9600円程度になる。
  • 地域への滞在時間が長くなると、地域との関係性が深まり、おとずれた人々が地域活性化や課題の解決に協力してくれるケースも期待できる。
  • ワーケーションを推進し、地域への中期滞在者を増やすことで定住者・移住者以外の人の協力を得て地域経済を回していく仕組みを作り出すことが可能になる。 
  • 現状では、地方自治体がワーケーションに対して肯定的な感情を必ずしも持っているわけではない。
    • 2020年8月㈱あしたのチーム&㈱Well-Being Japan&㈱日本旅行自治体職員向けのアンケートでは、ワーケーションに対しての期待は約3割程度。期待できないが4割、わからないが3割。
    • 所属する自治体でのワーケーション制度受け入れや呼び込みへの不安や課題に関しては4割が不安視、原因としては「環境整備」が7割、「制度への対応の必要性わからない」が5.5割。
  • (長田論として)ワーケーションは新しい概念で自治体側の不安は無理はない。しかし、地方における人の集まり方を変えることで従来の地方観光のあり方を大きく変える力があり、投資も大きくない。いち早い取組みが、地方の生き残りの分岐点となるだろう。

イノベーションを生み出す地域条件とは

  • 地方にとってワーケーションはチャンスだが、そのなかで勝ち負けが生まれる。関係人口を引き寄せられた地域は新たなイノベーション創発する地域として発展するだろう

    • 社会構造を変革するイノベーションは周縁の特定地域で集中して生まれる。英語ではGeographic Consentration of Innovation(イノベーションの地理的集積)と言う。
    • アメリカのシリコンバレー、中国の深センが最も顕著な例。
    • 理由は若年層にとっての生活コストの安さ、人口密度が低く、不便さからニーズが浮かび上がり新たなビジネスやソリューションが生まれるきっかけになる。
  • 日本の地域特性として見たときに可能性があるのはどこか?ワーケーションにより関係人口を増やせる分水嶺となるのは2つの要因が重要と考える。

  • 1.大都市圏からの距離。
    • 湘南や房総は既にコロナ契機で人が集積。
    • 神奈川北部・西部の厚木市小田原市、埼玉県の東京都隣接自治体も低コスト居住できる。箱根・伊豆・秩父などの観光地からも至近距離にあることがワーケーション的にもメリット。
  • 2.そこに集い集まる人の質。
    • オンラインでものごとが完結するようになると、逆説的に人々がリアルに交流することの価値が高まる。
    • 企業の社長が軽井沢に別荘をもつ理由の一つはネットワーク効果への期待。良い人材は良い人材を呼び込む正のネットワーク効果がある。こういうコミュニティを地域がつくれるかが非常に重要になる。
    • 軽井沢のように超一流の人材を最初から集めるのは難しいとして、集まる人の多様性を確保して、様々な年代、バックグラウンドを持つ人を集めることが大切になってくる。
    • ラノヴェッダーの「弱い紐帯の強さ」
    • 入山章栄曰く「弱いつながりが多ければ多様な情報を効率よく得られる。たくさん持っている人は普通手に入らない情報をたくさん入手出来る。イノベーションは既存の知の組み合わせゆえ、弱いつながりを多く持っている人のほうが基本的にはイノベーティブである。これは世界の研究者も多く同意している」(※)
    • レコメンドの強化により弱いつながりは検索上位に現れづらくなる。ワーケーションのリアルな交流で生まれる「セレンディピティ(偶察力)」は、無意識のうちに参加者が期待しているひとつの体験価値でもある。
    • ワーケーションでは、新しい接点がもたらす弱いつながりに対して意識的になることで、新しいアイデアや問題解決のためのヒントを感じ取って偶然の発見を呼び寄せることになる、。
  • 地域にとって大事なことは、コワーキングスペースや喫茶店などのサードプレイスを準備し、関係人口と定住人口が交流する場を街中に設計し、ワーケーションに訪れた人々のセレンディピティを促す仕掛けをつくることではないだろうか。

    ワーケーションが変える地方観光のあり方

  • 地域が年1〜2回の観光客をもてなす非日常の場→多様な人材の交流を生み出すワーケーションの場へと変化するとして、自治体や地方の観光産業にどのような影響があるか考察する
  • 平日のワーケーションにより、平日の客が呼び込めるようになる。そうしたら、地元民が日常生活で訪れている場所やサービスに体験価値を持たせないと長期滞在の訪問客を飽きさせてしまう。コンテンツ開発の必要性がある。
    • 「暮らす」という体験提供に価値が出てくる。
    • Airbnbを利用するユーザーは「暮らすように旅行する」という同社のコンセプトに共感している。
    • 滞在が長期化すると、地元の店で食材を買って料理したり、地元の居酒屋に行ったりして現地の人と同じ生活をするという体験を求めるようになる。
    • そこから旅人と地域との新しい交流が生じるケースも多くある。

      ワーケーションがスマートシティの可能性を引き出す

  • ワーケーションはスマートシティとの親和性も高い(!)
  • スマートシティとは…「都市の抱える諸問題に対して、ICTなどの新技術を活用しつつ、マネジメントが行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」と定義されている。
  • cf.スーパーシティとは…「スマートシティの一類型。AIやビッグデータなどを活用し、社会課題の解決を目指すもの。日本政府が推進している」

スーパーシティ構想では、住民参画が重視されており、3つの要素が記載されている。

  1. 生活全般にまたがる複数分野の先端的サービスの提供→行政手続きや移動、医療、教育などでの利便性向上させる。
  2. 複数分野間でのデータ連携→データ連携により先端的サービス実現を目指す。
  3. 大胆な規制改革→先端的サービスを実現するための規制改革を同時、一体的、包括的に推進。

スマートシティやスーパーシティ構想は住民、生活者視点のみで考えられるが、なかなかビジネスモデルにつながらない。

  • サービス享受者を関係人口にまで拡大することで、新しい展望を開くことができる。日本の都市や住居のインフラは高い水準であり、利便性向上は限定的であり追加コストの価値を見出し難いから。
  • ワーケーション人材をターゲットにしたスマートサービスには大きな可能性がある。
    • ワーケーションで地域に一定期間滞在する人にとって、乗換情報サービスなど移動の利便性が向上するソリューションを提供すると、行動範囲は地元民より広がり対価を払ってくれる可能性がある。
    • 住宅やオフィスをシェアする際も役立つ。別荘のシェアなどもあるが、物理的なカギを渡すことのハードルがあることも。これをスマートロックなどスマートハウスの技術を活用してセキュリティ安心感を高めたりも出来る。サービス利用料も収益につながるのであればコストでなく投資とみなすことも出来るだろう。(※)

ワーケーションに取り組む自治体の事例

パターン別に先進事例を紹介。

  1. 休暇によるリフレッシュを大事にする自然型ワーケーション
  2. まちの文化にふれることでセレンディピティを生み出す都市型ワーケーション
  3. 地方創生につながる社会貢献型ワーケーション

長野県や北海道のような自然を満喫するワーケーションは、レジャー地の強みを活かして従来の別荘族や観光客と異なる新たな層の獲得を目指している。 都心部をメインとしながらも、時々1〜2週間程度の休暇をとってリフレッシュする人材の誘致をターゲットとしている。

  • 長野県
    • 信州ならではの解放感あふれるリゾート地に滞在し、休暇を楽しみながら働くスタイルとして「信州リゾートテレワーク」を推進。
    • 有給休暇取得など働き方改革や生産性向上とストレス低減などをPR
    • 企業に対して、県内に3泊以上滞在すること、一人一万円以上の宿泊旅行代金であることを条件に、宿泊費の一部を支援する「信州リゾートテレワーク実践支援金」も提供。
  • 北海道
    • 一社日本テレワーク協会と連携し、北海道と道内17市町の共同事業として「北海道型ワーケーション」の創出に取り組んでいる。
    • 「首都圏の企業の社員やその家族などを対象に、道内に点在する短期滞在型サテライトオフィスを活用し、点と点を結んだ北海道ならではの長期滞在、広域周遊型のワーケーションプラン」と定義。
    • 「休暇・観光型」と「仕事・業務型」の2タイプがある。
    • 参加者と継続的な関係を築くため、受け入れ自治体で「ふるさとサポーターズ倶楽部」を設置し、ワーケーションした自治体への愛着を深める働きかけ。(※) 嬉野温泉十和田湖、ハワイの事例もあるが、これらは現地での仕事のウェイトも高くなっている。
  • 嬉野温泉
    • 和多屋別荘では、温泉旅館でワーケーションする試み。余剰客室をオフィス化し、館内にWi-Fi整備。サテライトオフィスで入居する企業も。
  • 十和田湖
  • ハワイ
    • JTBスノーピーク、ハワイでの法人向けプログラム提供
    • アウトドアで実施し、テント設営などを通したチームビルディングや企業トップ来賓を集めたミーティングなど自然を活かしたプログラム。
    • JTBハワイが所有していた施設をワーケーション用に改造。(コメント:組織開発目的のオフサイトミーティングだな。ワーケーションといえばそうだけど…)

ワーケーションのもうひとつのパターンは、都心部に近い街エリアで行われるパターン。宿泊を伴わない手軽な平日のワーケーションも可能になる。 都市型ワーケーションは、よりワーク部分にフォーカスするも、非日常の場で心身をリラックスさせるし、セレンディピティも誘発する有効な働き方でもある。

働き手と地域が関わることで地方創生につながる社会貢献型ワーケーションを最後にとりあげる。

  • イタリアのワンダー・グロットレで行われたサバティカルプロジェクト(これはサバティカルプロジェクトで厳密にはワーケーションではないとしつつ)

    • Airbnbでの事例。2019年、イタリアのNGOのワンダー・グロットレと協力したプロジェクト。イタリア南部の小さな村「グロットレ」の廃屋を再生するNGO主催のプロジェクトをAirbnbが後援した。
    • 過疎化のグロットレとは住民300人に対して空き家は600軒以上。5人のボランティア募集に28万人の応募があった。
    • 選ばれたボランティアは村の中心部の復興に取り組みながら農産物の栽培方法や養蜂、パスタ作りを学んで田舎の生活を体験した。
  • ビヨンド副業…地方企業のビジネスに都市圏に住む人が副業として関わり、普段はリモートでサポートしつつ、定期的に現地を訪れる形態がワーケーションでも考えられる。

  • 日経トレンディ、日経クロストレンドでは2021年のヒット予測第3位に挙げている。広がっていくのでは。

  • 和歌山ワーケーションプロジェクト「Open Innovation Platform」

    • ワーケーションに来る人を活用して地方創生を促進しようとしているのが和歌山県
    • 和歌山県はワーケーションを「価値創造ツール」と考えて訪問者とのコラボレーションにより地域課題の解決や新しいビジネス創出を目指している。
    • 具体的には、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスと和歌山県白浜町の連携。「ワーケーション事業・地域de WAAを通じた包括連携協定」を締結した。

ワーケーションがキャズムを超えて地方のエンジンになる

ワーケーションを一時的な流行にせず、キャズム超えして関係人口を呼び込むエンジンにするには、政府・自治体の連携による具体的で包括的な制度設計が求められる。

  • とくに法的な仕組みを整えることが重要と考える。
    • 諸外国では、長期休暇が長いが法制化して義務化されている。(例:フランスのバカンス法は5週間の取得義務があり、連続して取得する必要もある)
    • 日本では働き方改革関連法施行に伴って、5日間の有給休暇取得は義務付けられたが、連続した取得は義務化されていない。
  • もうひとつは、地方創生予算を活用することで、企業のワーケーションコストを補助し、インセンティブを高めること。
    • 2020年の地方創生関連の予算は2.5兆円、この助成金の一部でも振り分けるべき。ワーケーションの大きなネックは滞在長期化による諸コストの増加。
    • ハワイ例:有能な技術を持つ人の誘致のため、本業はリモートワークしてもらい、滞在先でNPOへの活動など通じて地域貢献してもらう「Movers and Shakas」というプログラムがある。
    • 参加者はオアフ島までの無料航空券や宿泊・コワーキングスペースの割引提供で支援している。
    • ハワイ例のように割引クーポンを出してでも、稼働率を上げることで収益化になると予想される。インバウンドピーク時でも旅館の平日の稼働率は35%だった。 -さらに大事なポイント。地方の労働者の不足を満たすためでなく、現在仕事を持っている人が、専門知識や強みを活かして地域を支援できる仕組みをつくること。
    • 例:アーティストインレジデンスから派生したデザイナーズインレジデンスという取組。
    • アーティストインレジデンスは1990年代からあり、60以上の施設があるが基本的には自分の作品生活に重きが置かれる。
    • デザイナーズインレジデンスでは、デザイナー、建築家、クリエイターが地域産業と連携して協働で商品開発や地域課題解決をおこなうことを目指す。
    • 例:独立行政法人国際交流基金では、アジアで活躍するデザイナーを東北エリアに誘致し、地域資源を活用したデザインの制作を行うプログラムを提供した。
    • 例:㈱「飛騨の森でクマは踊る」は、2018年に家具や木造品をつくるプログラムを展開。
  • 「○○・イン・レジデンス」の取組はアーティストやデザイナーに限らず幅広く応用出来るのでは。
  • 最後に、社会的な機運を醸成し、ワーケーションを「文化」にして社会に根付かせることも必要。
    • 例:軽井沢、葉山、明治時代以降外国人、皇室、財界人、文化人がこぞって別荘をつくり交流を生み出すコミュニティとなった。
    • ワーケーションを活用する多様な人材から構成させるコミュニティが作られる必要がある。担い手は、90年以降に誕生しているZ世代であろう。
    • Z世代はデジタルネイティブ、高い社会問題への意識、モバイルファーストで効率性を重んじる、現実的で実利を追い求める、という傾向がありマッチする。
    • Work from Anywhere at Anytimeのライフスタイルを自然に行っていくことが出来るだろう。

雑感

  • 消滅可能性都市の定義が「産めよ増やせよ」の発想ということで、妥当性としてはどうなんだろう感はある。この本の主題ではないが。
    • 必ずしもどの市区町村も「生産」である必要はなかろうし。
    • とはいえ、子育てが関わることでまちが活気づく点はやはりあるし、未来志向にはなる。
    • 「生産」と「消費」を分けるにせよ、生産に値する世代が消滅可能性都市に住むことは機会損失だったり職がないという状態だし。
    • 結局都会で生産と消費の両輪が起こるというのがこれまでの都市集積化の傾向だよなと。
    • コンパクトシティとか言っているが、そうなるとますます都市集積でそのなかの最適化、ということが大筋だったりするわけで。
    • 結局住む場所に対してどこでも住んで良いわけでもないのかなとか、インフラの維持費用とか不公平、不平等、という話になったりする。
  • ワーケーションをマイクロツーリズムの文脈のなかで関係人口創出とするストーリーは結構納得感。
    • 見込んでいるのは居住地周辺ということなのだろうなと。そうなると、都市圏だったら湘南以西だと小田原とか埼玉北部とか千葉の房総とかだよね。金持ちなら新幹線つかって熱海、軽井沢、那須塩原とかかな。
    • 関西圏だとどうだろうか?京阪神からの近郊だと、滋賀、和歌山、小豆島、兵庫の内陸部?関西圏は企業も少なく、体感的には東京よりもメリハリもって仕事と生活が混在している感じがあるから、いまひとつリアリティがないのかもしれないなあ。
  • こんなことを考えると、やはり「優秀な」イケてるホワイトカラーの人、生活水準が高い人、プチ貴族(取締役以下、ITに代表されるモダン企業パーソン)ってところが対象になるだろうなと思われう。しかし、こういった層ほど活躍余地があるので、関係人口創出におけるターゲットになり得るというわけでもある。
  • 学生というのはどうだろうか。指出一正の新書によれば大学卒業後、都市圏への就職なくストレートに地域に入り込む層も描かれている。担い手としてはこういった層が理想的といえばそうかもしれない。
  • 関係人口創出ということで関わってくる生産年齢人口のビジネスパーソン経験者は、落ち武者になるか、子育て考えるか、ネアカでフリースタイルに働く場所も人間関係も築ける「強い個人」か、などなど、想定されるなと思う。
  • 弱いつながりが多ければイノベーティブになる、は雑な議論だがきっとその道しかないと思わせるといつも思う。
    • リアルで弱いつながり、という重要性はあれどオンラインではすでに「弱い紐帯」で溢れているだろうとは思う。つまりイノベーティブになる資源はたいていの人にあるわけだ。FacebookとかTwitterとかInstagramとかで。
    • だとすると、イノベーティブですね、と言われるにはアクションが必要で、そこには人格的資質とか志向性とか「人間力」がある必要があるわけで。体現されなければイノベーティブかもしれない存在もそうでないということになるから、やったもん勝ちということなんでしょうね。ということは、発露するための場とかデザインがイノベーションのためには必要なんでしょうねえー
  • スマートシティ化がワーケーション人材にむしろ寄与する、というロジックは少し強引だろう。
    • スマートシティ化によるメリット創出があまりないだろうという見立てはそうかもしれない。ただ、説明もないため実感しきれてないだけかもしれない。
    • ワーケーションで乗換情報とか提供されたとてそれで変わるのか?とは思う。まあイメージているのは観光型MaaSなのだろうかと。決済も一元化され、地元の店とかもバンドルしてルートが組める。でも、これをスマートシティというの?ITならなんでも一緒くたにしているんじゃないかなあと思われた点。
  • 北海道のふるさとサポーター倶楽部など「関係人口案内所」的な働きかけが必要だろうが、実態はどうだろうか。このあたりはコミュニティデザイン関連の研究とか居場所論にも繋がるのかも。

RQの素案(長田論を読んでいて湧いた疑問)

  • どのようなワーケーションであれば、関係人口創出に寄与するのか。
  • ワーケーションで訪問する人にとっての交流インセンティブはなにか。(各人のニーズに基づいた関係のあり方が想定される。仕事中心、関係することでのネットワーク中心)
  • どのようにすれば、ワーケーション滞在中での地域住民と訪問者の関係がデザイン出来るのか(合同研修?オフ時間での懇親会?)
  • 補論的に、企業側にとって理想のワーケーションとはどんなものか(目的が生産性向上/イノベーション創出/SDGsへの寄与など考えられるが、それに基づいて従業員の健康増進/リビングラボ的な協働での事業創造/企業の戦略に基づいたSDGsへの対応、などが考えられる。大企業のそれとベンチャーでの推奨とは目的も異なるだろうと思われる)
  • 関係人口創出に寄与しているワーケーションにはどのような事例があるか。応用可能性は?
  • 実務的には、どのくらいの圏域であればマイクロツーリズムの文脈でのワーケーションを用いたリピート訪問者となり得るのだろうか。

以下は別の章のまとめもさらりとやっておく。


第1章 なぜいまワーケーションなのか

いろいろと書いてあるが、主にワーケーション定義と歴史の点を抜き出す。

  • ワーケーションとは、仕事と休暇を組み合わせた造語
  • リモートワーク等を活用し、普段の職場や居住地から離れ、リゾート地などで普段の仕事を継続しながら、その地域ならではの活動も行うこと
    • 分類としてワーケーション、ブレジャー、サバティカル、ワーキングホリデー、リモートワーク(テレワーク)、在宅ワーク(WFH)

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(長田の分類以外に協会やJR、省庁など事業者によってまとめ方はさまざま)

  • (長田は)「非日常の場に、勤務時間中に、自発的に滞在して仕事・余暇を過ごすこと」を定義とする

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日本におけるワーケーションの歴史

  • 2009年より総務省は地域おこし協力隊の制度を開始
  • 国土交通省では2007年頃から二地域居住を推進
  • その地域で生活の糧を得られないので現役移住が難しい。そのため、旅行以上、移住未満の手段としてワーケーションに注目
    • 東京オリパラのため、訪日外国人が想定されていたこともあり、その期間は首都圏を離れて仕事するという機運があった
  • 2019年11月、和歌山県と長野県の呼びかけに応じて「ワーケーション自治体協議会」が立ち上がる。(開始時65→現175に)
    • 現実はワーケーションどころかリモートワーク導入も進んでいなかったコロナ以前
    • 2020、コロナは心理的制度的障壁を取り払い、ホワイトカラーはオフィス外の仕事を経験するように。この流れでワーケーションに注目。
  • 2020年10月観光庁がワーケーションの普及を目的とする『新たな旅のスタイル』に関する検討委員会を設置。
  • 2020年12月「感染拡大防止と観光需要回復のための政策プラン」で、Gotoトラベル事業の延長やワーケーション普及で国内観光需要を喚起目指すことに。

(その後も第一章は、企業の意識変化とかオフィス解約とかいろいろあるが割愛) いろいろ書いてあるが、ワーケーションは働き手の創造力を引き出す「仕掛け」である(というのが長田の主張)


第2章 私達が働く理由とワークスタイルの変遷

労働の価値観変遷とかAIの台頭による働き方の変化予測や分類などが書かれている。 長田の記載の中でハッとするのがワーケーションは「仕事」と「遊び」を両立するという点。遊びと仕事を対立軸におかず、渾然としたものとして捉える必要性。

  • 我々ひとりひとりが働く場所と働く時間の最適化を行い、自分が最もパフォーマンス発揮できるワークスタイルを会社に頼ることなく自分でデザインする時代がやってきている。
  • 海外ではリモートワークであるかどうかはWFHに限らず、オフィス内外かで考える。(例:GitLab)
  • オフィス外の仕事が認められると仕事と余暇の関係性が変わる。その双方の効率化を最大化するためには、場所的な垣根を設ける必要がなくなる。
  • 私達の創造性は複数の仕事を行いつつ、日常生活や遊びを同時並行で行うことによって増す。(例:佐藤可士和)(※)
  • 仕事と遊びを同じ視線で考える姿勢で、日常のあらゆる活動を価値あるものとして再評価することが精神の健全性のためにも大事になる。
  • ロジェ・カイヨワの6つの活動『遊びと人間』より(割愛するが) -自由、非生産的、虚構の活動ということで、仕事とは相容れない面があるかもしれないが
  • 仏教における「遊び」
    • 後白河法皇歌謡集の『梁塵秘抄』「遊びをせんとや生まれけむ」
    • 「遊戯(ゆげ)」=何ものにもとらわれず自由自在なこと→仏の救い、人々の救済活動を行うことを意味する
    • 仏教における遊びは、布教や修行、人々の救済などを行う際の「物理的・精神的な自由度」を指している。
  • 仏教の遊びの解釈にたつと、働くことと遊ぶことの間に明確な繋がりが見いだせる。
  • 私達が社会を良くするために自由な活動を行い、またそのことを通じて自分自身を成長させる行為こそが「働くこと」かつ「遊ぶこと」であり生きることそのもの(※)
  • これをもっとも象徴するライフスタイル、ワークスタイルこそがワーケーションである(長田談)

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雑感

  • いま、まじニート(学生だけど)なのだが、自分でデザインして働くとか、遊びと仕事の一体化(いわゆるWLI)というマインドを持ち続けて働けるだけの「分人的」スタンスを確立するのは難しいな。
    • 会社の評価制度で給料あげるために、とか、社内政治どうの、とかって考えていくと、WLIどころかワークがオールになってしまう(性格はあるだろうが)マイペースで働けるようにするには、お金の問題はいつまでもつきまとうものの、どちらかというとフリーなマインドをどう持てるように私生活をデザインするか、ってところが大事に思った。
  • WLIで働くにあたっては、一般的なホワイトカラーと馴染みが悪いなと。超絶ホワイトカラーエグゼンプションか、職人的な人か、田舎でスローペースでも生活と仕事が近いような人はいいけど、使役的なベンチャー労働環境だと、いくら思いがあっても雇用者と労働者の枠組みでWLIはブラック賛歌になるとベンチャー人事としては思うばかり。

第3章 ワーケーションがクリエイティブな組織を創る

リモートワークの社内外先進事例の記載。 企業のメリットとして

  • オフィス維持や通勤に関わるコストの削減
  • SDGsの取組としての社会的貢献 -緊急事態に備えたレジリエンスBCP) ワーケーションに対する懸念として
  • 社内コミュニケーションと帰属意識
  • 仕事のパフォーマンスとクオリティ
  • 孤独感とストレスマネジメント
  • 公平・公正な成果管理と人事評価
  • 労働時間の管理
  • 労災・リスク管理

仕事のやり方を変えるだけでなく、会社と個人の関係性が根本から変わる必要がある(それこそ仕事と遊びの渾然化した働き方のためには) より成熟した新しい関係になるべき(ここで臨床心理的なもので、ウィニコットの「移行現象と移行対象」がひかれる) 会社と個人が擬似的な親子関係な今→移行するためには、「第3の領域」において意図的に「遊ぶ」場をもうける必要がある。ここにおいてワーケーションの意義がある。(※)

雑感

少しアクロバティックだが、おもしろい視点だった。関係性を変えるために、意図的にワーケーションを組み込むというのが。 そして、なぜ企業側がこの親子関係を解消せねばならないか、という点はより明確にする必要があるよな。親子関係だからこそマネジメントしやすい点があるわけで。 親子関係では収益があがらずイノベーション起こらないから、というのはたしかにそうだけど、これは企業のなりたちとか日本人の生活感の変化とかに基づくのかなと思ったりする。 意図して関係性をデザインするインセンティブはどこにあるのか、そこを明確にしないとね。


第5章 ワーケーションを効果的に実施するためのヒント

いくつかヒントを記載している。前提として「制度面…会社の規則としてワーケーションが認められている」「技術面…リモートワークで業務をこなせるシステム環境がある」これらが整っていることを前提としている。

  1. 目的の設定…休暇、仕事、地域貢献、なにに重きをおくか
  2. 場所・施設の選定…目的に応じた場所の決定
  3. コミュニケーションインターフェイスのデザイン…非対面、非同期で仕事をすすめることを念頭に位置づけを決める
  4. 導入プロセスの設計…段階的に取り入れることや、導入後も実施してどうか検証してみる

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