Looking for a Sense of Authenticity

<芸術は長く、人生は短い(Ars Longa, vita brevis)>

【読書】 『世界の生涯学習ー現状と課題ー』(新海英行・松田武雄編)メモ

新海英行研究室のOBOGで編集した名古屋大の各国比較研究の論文集。
ただ、現代日本の論文もあることからざっと概観することにした。

現代の日本における生涯学習政策

  • 生涯学習体系の移行」と題し、1980年代に始まる臨調行政改革の教育版として、能力主義教育政策を提唱、教育の個性化=自由化のもと、地域との連携、学校との連携、さらに首長部局を軸に据えた一般行政主導の生涯学習改革を志向している。
  • 指定管理者制度の導入で市場化は一層促進されている。公教育としての社会教育(生涯学習)を解体しつつある。


これが近年の生涯学習政策についての簡潔な整理。

読書メモ

新自由主義政策…経済的効率性を人間のいのちや暮らしよりも優先。

  • 競争により不当な格差を生む結果に
  • 生存や発達の問題が個々人の自己責任とされ、社会的国家的な責任の保障外とされる

人権感覚

  • ひととしての成長・発達、ひとらしく生きることを人権の基本と取らえている
  • これは社会教育との出会いのなかで身につけ実践のなかでリアルな認識として深められた
  • 背後には生存権に裏打ちされた学習権・教育権の発想がある
?ここで疑問?

学習とか学びというものが、地方創生とかコミュニティづくりのなかに位置付けられるのはどのような点においてなんだろうか?
他の行政学とかと違う点は?市民性形成?それって社会教育ならではなのか?

ひとつの解として

佐藤一子(1998)の紹介から、ハンブルク宣言(1997)では、グローバリゼーションを批判し、克服する一つの方途として成人教育(生涯教育)がある

生涯学習の政策や実践に影響を及ぼしている国際機関

-ユネスコ←ヒューマニスティックな観点で概念を発展させる方向づけ
-フォール・レポート(生きるための学習)(1972)
-人間の全体性を強調。個人を完全な人間へと統合していくための営み

  • ドロール・レポート(秘められた宝)(1996)

-新自由主義政策のグローバリゼーションのもとでのレポート
-知ること、為すこと、ともに生きること、人として生きること の4つを学ぶ
-『知識社会に向けて』(2005)で、各国政府に教育の質を高める勧告
-「知識の価値の強化」「いっそうの参画型知識社会」「知識政治の良い統合」の3柱
-ユネスコEUOECDと定義を巡って1990年代議論したが、次第に合意形成
-雇用、社会的結束、個人の自己実現、社会的包摂を一体的に取り組むとう合意へ

-(生涯学習のキー・コンピテンス)(2007)にてEUが提案

-現代社会が直面する困難な状況を克服していくための不可欠な取り組みが生涯学習
-そのための学習活動を組織化する教育哲学こそが生涯学習
-社会における民主主義を実現するための重要な理念が生涯学習

リカレント教育

  • 定型教育と仕事との調和を重視していて、生涯学習の概念とは差異あり
  • リカレント教育は生涯にわたる教育プロセスをさえぎる
  • 定型的な学校教育、特に高等教育保障への代替的な戦略=リカレント教育

  • 生涯学習は切れ目のない継続性という見方であり、フォーマルとノンフォーマル形態の学習の統合を強調している。成人へのセカンドチャンスを与えるものと考えている(tsuijinman1996)

日本における生涯学習

  • 文献としては1972の東洋経済の書籍に萌芽
  • これからの産業社会において「自己啓発」を支援するものとして発展した概念
  • 生涯教育から生涯学習の用語へと変容していった
  • ここには公教育としての生涯学習の保障という観点は見られない
  • 行政では、1981の中教審答申より文部省が用語を使用

-生涯教育を教育再編の理念として捉えている
-生涯学習の用語は理念でなく、単に個人の生涯にわたる学習という機能として理解

  • 1984からの臨教審、とくに1986の第二次答申

-「生涯学習体系への移行」
-生涯学習における自己責任が強調、生涯学習の市場化も推進
-この後、学校教育、社会教育もこの路線になる
ベレンフレームワークと比較すると、現代社会課題に生涯学習が果たす役割があるという問題意識は希薄。その後の中教審答申「地の循環型社会の構築を目指して」(2008)でもこの意識は変わらない。

今後の課題

  • 社会的諸問題の解決に関連づけられたユネスコ的な生涯学習の理解の必要性
  • EUの職業教育中心の生涯学習も政策に位置付けられる必要がある(ここは日本は弱い)
松田による付け足し
  • Social Pedagogyの研究が進展している
  • spとは、教育と福祉を融合したような教育福祉的支援を青少年などに行う活動
  • 貧困、青少年犯罪、薬物中毒、難民問題、、、
  • こういう領域へのアプローチを行うが、生涯学習における社会的な側面と重なる

第13章「社会教育と教育福祉論」より

  • 社会教育は地域住民の実際生活に基づく学習活動のための環境醸成を行う取り組み
  • 教育福祉論は、児童養護施設の教育権保障にはじまり、さまざまな困難を抱える子供達の教育権保障を求める提起を行ってきた。
  • 地域住民が抱える困難は、生業の衰弱、少子高齢化による地域の不活性化、地域経済・地域生活の困難、シャッター街の拡大、「限界集落化」の不安など。それらに加えて子育て、高齢者介護など支援体制の不備。さらには個人化、孤立化、分断化の生活現象がある。
  • 失業やホームレスなど絶対的な貧困とは異なるが「現代の貧困」というものがある。社会的排除や能力の未開化がそうである(*なんとなくは伝わるがイメージしづらい)
  • 社会教育はもともと学校教育批判の役割を持っている。教育の新領域の存在を提示し、学校教育への組織化を促してきた
  • 「社会教育の議論には下部構造が弱い」という指摘があるが、人間の基本的な活動である労働ないし勤労の場における学習については社会教育研究は不十分

-下部構造とは、マルクス主義経由のワードで、土台(Basis)すなわち経済的構造を下部構造とした
-宗教,芸術,哲学などの社会的諸意識形態や政治,法律などが上部構造

  • 最後に社会教育研究の課題を教育福祉論と社会的排除克服の観点から提示する。3つ。

-(社会教育と)地域活動との結合
-地域住民に保障していくためのの協同をどのように築くか(?意味不明)
-教育学習実践において〜??(ようはいろんな人同士の結びつきをどう築くかってことか)
(*マジ、なにとなにの結びつきかとか、文章はダラダラ長いし主語と述語のあいまいな文章で読む気が失せた)
※期待して読んだが、総論、大文字の正解が書き連ねていて発見には乏しい。社会教育と福祉の接点についての関連が明確に示されているわけではなかった。社会教育の話なの?教育福祉論の話なの?その関連をちゃんと明示してくれていない。